斜角筋とトリガーポイント
斜角筋のトリガーポイントは、肩こりの原因として極めて重要です。
本記事では、斜角筋のトリガーポイントについて、最も詳しく解説します。
斜角筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。
斜角筋の基礎知識
斜角筋は首の両側の大鎖骨上窩に位置する深頚筋です。斜角筋は、3つあるいは4つの小さな筋群(前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋および最小斜角筋)に分かれます。 斜角筋の一部は頸椎の横突起により圧縮されている場合があります。斜角筋は胸鎖乳突筋の奥に隠れているため、痛みの原因として見逃されがちな筋肉です。
神経支配
斜角筋は頚神経叢(C3~C4)と腕神経叢(C5~C7)の神経支配を受けます。頚神経叢と腕神経叢は脊髄神経から分枝し、相互に連携しながら、頚神経叢は頭・顔・首を、腕神経叢は鎖骨・肩・上腕・前腕・手を支配します。 なお、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋および最小斜角筋によって、神経支配は異なります。
- 前斜角筋;C5~C6
- 中斜角筋;C3~C8
- 斜角筋;C6~C8
- 最小斜角筋;C7
解剖
前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋および最小斜角筋によって、起始部・停止部は異なります。
- 前斜角筋
- 起始部;C3~C6 頸椎体の前結節
- 停止部;第一肋骨の前斜角筋結節
- 中斜角筋
- 起始部;C2~C7 頸椎体の後結節
- 停止部;第一肋骨の上縁
- 後斜角筋
- 起始部;C4~C6 頸椎体の後結節
- 停止部;第二肋骨外面
- 最小斜角筋
- 起始部;C7 頸椎体の前結節
- 停止部;胸膜上膜
斜角筋は分枝して、いくつかの椎骨に付着するため、それぞれの長さが異なる首の筋肉です。
働き
斜角筋は呼吸の補助(第一肋骨の挙上)、頭部の側屈・回旋・屈曲、頸部の安定化に関与します。
斜角筋のトリガーポイント
斜角筋のトリガーポイントは、筋肉の大きさ(小ささ)からは想像がつかないほど広範囲に影響を及ぼします。胸部、上背部、肩、腕および手といった上半身の様々なところに、痛みやしびれに代表されるいわゆる異常感覚を引き起こします。小さい斜角筋が広範囲に影響を及ぼす理由として、神経支配が頚神経叢と腕神経叢という上半身に問題を起こしやすい神経によって斜角筋は支配されているためであると考えられます。
トリガーポイントの位置と関連痛領域
斜角筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。患者が訴える関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。斜角筋のトリガーポイントは筋線維の途中に形成されます。したがって、斜角筋にはトリガーポイントが多く乱発するように感じられますが、一定のパターンがあります。
- トリガーポイントは、斜角筋内に散発し、特定の場所によくできるというものではありません。
- 関連痛領域は広範囲に及びます。胸部、上腕、前腕、肩甲部、拇指・示指に痛みが強く現れます。しびれや感覚異常などを引き起こすこともあります。
トリガーポイントの原因
斜角筋は頭部の動きに応じ、頸部の安定化に寄与するため、そのような動きおいて斜角筋に負担がかかることは容易に想像できます。一方で、見逃されがちなのは呼吸時の働きです。斜角筋は、吸気の際に第一肋骨と第二肋骨を引き上げます。したがって、激しい呼吸は斜角筋にダメージを与えます。斜角筋と関係がなさそうなスポーツで斜角筋を傷めるのは、慣れない動きが原因ではなく、実は呼吸が原因であったりします。
急性的な原因
- 激しい呼吸の伴うスポーツ
- 自動車事故
慢性的な原因
- 呼吸器疾患によって引き起こされる努力呼吸
トリガーポイントによる症状
斜角筋にトリガーポイントができると、関連する広範囲に多様な症状を引き起こします。多様であるがゆえに、斜角筋のトリガーポイントが引き起こす症状は誤診されやすくなります。誤診されやすいものは次の通りです。
- 菱形筋のトリガーポイント ⇔ 斜角筋のトリガーポイント
- 狭心症の痛み ⇔ 斜角筋のトリガーポイントから胸部への関連痛
- 滑液包炎 ⇔ 斜角筋のトリガーポイントから肩への関連痛
- 神経根の圧迫 ⇔ 斜角筋のトリガーポイントから腕、手への関連痛
- 腕や手の幻肢痛 ⇔ 斜角筋のトリガーポイントから腕、手への関連痛
- 手根管症候群 ⇔ 第一肋骨が鎖骨側に引き上げられることによる絞扼性神経障害(胸郭出口症候群)
- 原因不明の不眠、神経過敏、抑うつ症状 ⇔ 斜角筋のトリガーポイント
斜角筋のトリガーポイントと関連する内臓
- 頸部(C4~7)の椎間板
頸部の椎間板ヘルニアがあると、斜角筋にトリガーポイントが生じることがあります。 - 心臓