棘下筋とトリガーポイント
棘下筋のトリガーポイントは、肩こりの原因として極めて重要です。
本記事では、棘下筋のトリガーポイントについて、詳しく解説します。
棘下筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。
棘下筋の基礎知識
棘下筋は、肩甲棘の下部の棘下窩に収まって肩甲骨のほぼ全体を覆っています。棘下筋は、棘上筋、小円筋および肩甲下筋とともに回旋筋腱板(rotator cuff)を構成する筋肉の一つです。棘下筋は、上腕骨頭を関節窩に固定するために重要な役割を担っています。上腕を外旋させる筋肉であるため日常生活で酷使されやすく、最も損傷しやすい筋肉の一つとされています。
神経支配
棘下筋は、肩甲上神経(C4~5)の神経支配を受けます。肩甲上神経は、腕神経叢の上神経幹から起こり、棘上筋および棘下筋を支配します。肩甲上神経は肩関節包および肩鎖関節包への枝を含む可能性もあり、棘上筋を痛めたり、肩関節包を痛めたりすることで、棘下筋に悪影響を与えることがあります。
解剖
- 【起始部】肩甲骨棘下窩
- 【停止部】肩関節包、上腕骨大結節の後方
棘下筋の大部分は、僧帽筋や三角筋の深部に位置しています。棘下筋の下部は、僧帽筋と三角筋の間から触れることができます。
働き
棘下筋の主な働きは、肩関節(上腕)の外旋です。ボールを投げたり、ラケット競技で腕を引いたりする時に重要な役割を担います。また、他の rotator cuff とともに、肩関節の脱臼を防止する働きもあります。
棘下筋のトリガーポイント
肩の前部に発生する痛みの犯人が棘下筋のトリガーポイントであることはよくあり、痛みは腕の内側を通って指先まで及ぶこともあります。このような場合、痛みのある他の部分を揉み解そうするケースがありますが、それは無意味です。
トリガーポイントの位置と関連痛領域
棘下筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。訴えのある関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。なお、棘上筋と棘下筋では、関連痛領域が共通しています。棘下筋のトリガーポイントからの関連痛は、棘上筋よりも深部に痛みを放散させます。
- トリガーポイントは、肩甲棘の下縁~肩甲骨内側縁の内側に沿って、棘下窩にあります。
- 関連痛領域は、肩部を中心とした痛みは上腕~手指に放散し、肩甲骨内側縁にも強く現れます。一部、頸部に現れることがあります。
トリガーポイントの原因
棘下筋は急性・慢性の両方のストレスを受けやすい筋肉で、身体の中で最も損傷しやすい筋肉の一つです。日常生活に起因する慢性的なストレスを挙げれば、枚挙に暇がありません。
急性的な原因
- スポーツ
- 慣れない人が急に投球動作を行ったり、テニスやバドミントンのようなラケット競技をしたりすると、棘下筋を傷めることがあります。
慢性的な原因
- 腕を上げ続けた状態の維持
- 腕を上方に持ち上げた状態で仕事をする場合、棘上筋と同様に、棘下筋は酷使されます。
- 車のハンドルの持ち方がマズイ
- ハンドルの上に手を置いて運転する癖は、棘上筋と棘下筋を酷使することになります。
- マウス操作
- マウスに手を置いたまま、PC画面を眺めている人はよくいます。これは、腕を目いっぱい外旋させて保持することになるので、棘下筋は常に収縮することになります。
トリガーポイントによる症状
肩の前部に痛みが起こります。ひどくなると上肢全体にかけて痛みやしびれが現れます。上腕二頭筋炎や腱板炎と誤診されたり、手指伸筋にトリガーポイントを形成させて手に痛みを生じさせることがあります。
棘下筋が機能不全に陥った場合、他の回旋筋が代償的に働きます。その結果、他の回旋筋にもトリガーポイントができ、他の回旋筋も機能不全に陥ってきます。肩関節周囲炎と診断されたケースでも、回旋筋のトリガーポイントを治療することで症状が改善することがあります。
棘下筋のトリガーポイントと関連する内臓
- 頸部椎間板ヘルニアがあると棘下筋にトリガーポイントができやすい
- 心臓