腰方形筋とトリガーポイント
腰方形筋のトリガーポイントは、腰痛の原因として極めて重要です。
本記事では、腰方形筋のトリガーポイントについて、詳しく解説します。
腰方形筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。
腰方形筋は、脊柱起立筋群の深部に隠れているため、痛みの発生源として見逃されることが多い筋肉です。分厚い脊柱起立筋群に覆われているために触診しにくく、診察・治療は、側臥位にてストレッチした状態で行うほうが効果的です。
人間工学的に好ましくない環境で生活している場合に、腰方形筋を痛めやすくトリガーポイントの形成につながります。近年、人間工学は目覚ましい発展を遂げ、椅子や机は快適なものが増えました。しかしながら、古い事務所などでは、ガタガタの椅子や高さのあわない作業机が使われていることがあり、腰方形筋を痛める要因が少なからずあります。
腰方形筋の基礎知識
腰部にある長方形の筋肉のため、腰方形筋(quadratus lumborum muscle)といいます。腰方形筋が慢性的に収縮する(トリガーポイントができる)と強い痛みが出るため、神経根性の痛みと間違われることがあります。
神経支配
腰方形筋は、肋下神経(L12、肋間神経の一番下の神経)と腰神経叢前肢(L1~3)の神経支配をうけます。
解剖
- 【起始部】腸骨稜、腸腰靭帯
- 【停止部】L1~4の横突起、第12肋骨下縁
腰方形筋は、腰椎の両外側に位置し、腹腔後壁の一部を作ります。付着部が広範囲であるため、骨格の影響を受けやすい筋肉です。
働き
- 体幹の側屈
- 呼吸の際、第12肋骨を固定
腰方形筋は、単独では体幹を傾けたり骨盤を引き上げたり、呼吸筋の補助として咳や急激に息を吐く際に使われます。また、立位や座位の際は、背中を反らせたり、腰椎を安定化させたりします。
腰方形筋のトリガーポイント
腰方形筋は骨格との付着部が広範囲であるため、骨格構造上のアンバランスの影響を受けやすく、骨格に一定レベル以上のアンバランスがあると(どんな人でも、必ずアンバランスはあるが)、腰方形筋に悪影響を与え、トリガーポイントが形成されます。
トリガーポイントの位置と関連痛領域
腰方形筋のトリガーポイントは、 浅部と深部の2パターンで見つかることが多いとされています。しかしながら、腰方形筋のトリガーポイントは、分厚い脊柱起立筋の深部に存在することから、見つけられることも治療されることも容易ではありません。腰臀部の痛みをたどると、最後の最後に腰方形筋のトリガーポイントにたどり着いたということもあり、トリガーポイントに関する知見を体系化したことで知られるTravelとSimonsは、腰方形筋のことを「腰痛のジョーカー」と呼んだそうです。
- ①のトリガーポイントは、腰方形筋の浅層部で、腰方形筋の外側部にあり、第12肋骨の下に見つかります。
- 関連痛領域は、腸骨稜に沿って、鼠径部に放散し、時には腹部も出現します。
- ②のトリガーポイントは、腰方形筋の浅層部で、腰方形筋の外側部にあり、腸骨稜の上に見つかります。
- 関連痛領域は、大転子の周辺から大腿外側にも出現し、時には殿筋線付近にも現れます。
- ③のトリガーポイントは、腰方形筋の深層部でL3横突起の付近、L4~L5横突起の付近にあります。
- 関連痛領域は、仙腸関節付近、臀部の下方から外側に放散します。
トリガーポイントの原因
腰方形筋のトリガーポイントは、骨格構造上のアンバランスと、急性・慢性のストレスにより形成されます。骨格構造上のアンバランスには、骨格の左右差のみならず、上肢が長すぎる・短すぎる、下肢が長すぎる・短すぎるというような、平均的な家具に合わないアンバランスも含みます。したがって、多くの人は気づかないアンバランスを抱えながら生活していることが考えられます。また、そもそもの骨格のアンバランスのみならず、日常生活で生み出されるアンバランスも腰方形筋にトリガーポイントが形成される原因となりますので、少なくとも日常生活においては、正しい姿勢を保つ意識を持つことは極めて重要です。
腰方形筋にトリガーポイントを形成させる急性・慢性のストレスを以下に示します。
急性的な原因
- 体幹を屈曲する際、急激な動作を行う。
この急激な動作には、体操やストレッチの際の回旋や屈曲も含みます。体操やストレッチは筋肉にとって良いことですが、急激にやることは実は良くないという事例でもあります。
慢性的な原因
- 胸部、腰部の関節機能不全
- お尻のポケットに物を入れること
日本人は右利きが多いため、右のお尻ポケットに物を入れます。しかしながら、右の腰方形筋が必ず傷むわけではありません。決まった片方のポケットに物を入れることにより引き起こされる骨格構造上のアンバランスは、両方の腰方形筋に影響を与えます。
トリガーポイントによる症状
腰方形筋のトリガーポイントは多様な症状を引き起こします。
- 深部の背下部痛(腰方形筋は深部にあるため)
- 刺すような鋭い痛み(休息時よりも座位や立位で、不定期に起こります)
- 睡眠障害、寝返り、起き上がり困難(大転子にまで痛みが出たとき)
- 屈曲、側屈の制限、悪化すれば脊柱側弯症を引き起こす可能性あり
腰方形筋のトリガーポイントと関連する内臓
- 腎臓
- 膀胱
- 子宮、前立腺
- 結腸
- 回腸
- 空腸 など