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本ページは、疼痛治療現場でご活躍中の実臨床医からの最新レポート(疼痛治療レポート)の抜粋です。
2022年に日本の人口に占める高齢化率が29%に達したこと(総務省統計局)を受けて、加齢とともに
増加することが判明している「腰痛」が、日常生活における障害の主な原因の1つであることから、
健康寿命を阻害する社会的課題となっています。
予防の観点からは、腰痛リスクの早期発見が重要であり、治療の観点からは運動療法の継続性や手術でも取り切れない
術後の疼痛コントロールを含め、腰痛全体の治療戦略が重要と考えます。そこで、術後の疼痛コントロールに
トリガーポイント注射を積極的に治療に取り入れている
信州大学医学部運動機能学教室(整形外科)教授 髙橋淳先生のお話を掲載しています。
日本は現在、世界に類を見ない超高齢社会を迎えており、医療費の高騰や社会経済的損失が深刻に懸念されています。そのため、迅速な予防および治療対策のために、腰痛に関連する要因を特定することが重要になっています。まずは、腰痛を自覚しているが、病院で治療を受けていない潜在的腰痛患者が1割以上存在することが今回の「おぶせスタディコホート」で判明しました。そして、高齢、職業、座りがちな生活、肥満、脊椎のアライメント不良、妊娠、喫煙など、腰痛の危険因子はいくつか示唆されていますが、腰痛の発症に最も強い影響を与えるものはまだわかっていません。今回の調査で腰痛発症の関連因子を明らかにしたことで、腰痛予防に寄与するものと考えます。
(出典)Uehara M et al. J Clin Med. 2021 ; 10(18) : 4213.
また、慢性腰痛に運動療法が効果的であることは分かっていますが、継続することの難しさが課題として取り上げられており、その対策についてもご紹介します。
小布施町の住民登録から無-作為抽出した411 人(男性201 人、女性210人)を対象に腰痛の程度をVASスコア(0~100mm)で評価し、VAS>50mm を腰痛ありと定義しました。腰痛は53 人(12.9%) の参加者( 男性23 人(11.4%)、女性30 人(14.3%)) に認めました。この中に急性腰痛の症例はありませんでした。60代より50代の方が高い有病率の理由として、50代は責任ある職に就く人が多く、ストレスによるものと考えられましたが、基本的に高齢者の腰痛の有病率は年齢とともに増加する傾向がみられました。最後にこの研究の主な限界として、抽出エリアが郊外のため地域特性があり都市部との違いがある可能性があります。また、強制力のない調査のため候補者の3分の2が参加辞退したため、不完全選択バイアスを完全に排除できませんでした。
表1 腰痛の有病率
脊柱アライメントを評価するための指標としてはScoliosis Research Society Schwab adult spinal deformity分類(SRS- Schwab 分類)のsagittal modifierが一般的です。それは患者固有の骨盤形態の指標としてのpelvicincidence(PI)、PI に適合する腰椎前弯角(lumbar lordosis, LL)の指標としてPI-LL、C7から仙骨までの脊柱アライメントの指標としてのsagittal vertical axis(SVA)、骨盤後傾の指標であるpelvic tilt(PT)です。SRS- Schwab分類ではPI-LL10 度以上、SVA4cm 以上、PT20度以上が脊柱後弯と定義され、手術加療における治療指標とされています。
図1 成人脊柱変形のSRS-Schwab分類
C7から仙骨までの矢状面アライメントの指標であり、PI-LL不一致のない胸椎後弯症もSVA増加として表れます。SVAは変形部位以外の脊柱や下肢による代償により同一患者でも変化してしまうため、global tilt やT1 pelvic angle など姿勢の影響を受けにくい脊柱骨盤アライメントの指標が開発されています。SVAの増加は後弯変形により脊柱の直立姿勢保持機能が障害されていることを表しますが、それが腰痛の原因となることが近年よく知られるようになってきました。そのメカニズムについてはいまだ不明なことも多いですが、背筋や殿筋などの筋由来の腰痛と考えられています。骨盤後傾(PT増加)によりSVA低値となっている患者では、重心線が仙骨に近づくため腰痛は少ないことが多いです。
図2 SVA
腰椎後弯症の指標となり10度以上が後弯と定義されます。腰椎後弯症矯正手術における矯正目標の簡便な指標となります。しかし、腰椎後弯症に多い低P(I いわゆる骨盤後傾)で上位腰椎ではすでに後弯となっている患者(Roussouly分類のタイプⅠ)や、胸腰椎移行部における椎体骨折に伴う後弯症の評価には適しません。LLが減少することによりPI-LLが増加すると体幹は前傾位となり腰痛が生じます。
図3 PI-LL
腰痛発症との関連因子として、単変量解析では、SVA、PI-LLのミスマッチ、加齢が有意な関連を認め、多変量解析ではPI-LLのミスマッチが重要な独立因子でした。SVA、PI-LLミスマッチの高さは健康な地域在住高齢者の腰痛発症と有意に関連しており、高齢者の腰痛リスクの簡単な指標として役立ち、腰痛の予防につながります。つまり、症状がない段階でも、脊椎アライメント評価(SVA、PI-LLミスマッチ)で腰痛リスクが高まっていることが分かれば事前に腰痛体操等の予防的対策を講じることができると考えます。
(出典:Uehara M, Takahashi J, et al. J Clin Med.2021;10(18):4213.)
脊柱起立筋は、棘筋、最長筋、腸肋筋で構成する筋群で、骨盤から後頭部まで背骨に沿って存在する背中で最も大きく長い筋肉です。その中で、腰腸肋筋が最も外側にあります。関連痛は、中殿部に現れることが多く、重症化すると第12肋骨の下縁付近にまで放散します。
脊柱起立筋
中殿筋は、大殿筋・小殿筋とともに殿筋を構成します。中殿筋は大殿筋の上方・深部に位置し、中殿筋の半分程度は大殿筋に覆われています。中殿筋の深部には小殿筋があります。中殿筋の大きさは、大殿筋の半分程度で、小殿筋の2倍程度です。殿筋群は股関節部の大部分を占める筋肉で、歩く時や走る時に重要な役割を担います。
中殿筋
梨状筋
梨状筋は、股関節の深部(大殿筋、中殿筋の下)にあり、股関節を外旋させる深層外旋六筋の中で主力になる筋肉です。梨状筋のさらに深部には、上双子筋があり、梨状筋と上双子筋の間を坐骨神経が通ります。梨状筋内を坐骨神経が通っているケース、梨状筋を挟むように坐骨神経が通っているケースも稀にあります。梨状筋は小さい筋肉ですが、狭いスペースに位置しているため、慢性的な短縮・拘縮が起こると周辺の神経(特に坐骨神経)や血管に対して容易に悪影響を与えます。
トリガーポイント注射は、局所麻酔薬または局所麻酔薬を主剤とする薬剤をトリガーポイントに注射することで、トリガーポイントを消失させる手技です。それによってトリガーポイントが原因で発生した痛みが軽減します。
薬液量が足りない場合は、局所麻酔剤(リドカイン塩酸塩もしくはメピバカイン塩酸塩)+ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤で8mL~12mLを使用します。
薬液量は、1 箇所0.5-2.5mL、合計5mL までを基本とし、腰・臀部等複数個所投与の場合であっても8 箇所、12mLまでとしています。
症候性神経痛、筋肉痛、腰痛症、肩関節周囲炎
血管内を避けて局所に注射する。
トリガーポイントの位置まで1-2cmの深さに刺入している限り、気胸の心配はありません。刺入時の痛みを強く訴える場合は、26G 13mm針を使用します。
トリガーポイントの探し方
髙橋淳先生からトリガーポイント注射をされる先生方へのメッセージです。
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トリガーポイントについての基礎的な理解から一般的な治療方法まで幅広い情報を掲載しています。初めて学習される方からご専門の先生まで、是非ご一読いただけますと幸いです。
すぎはら整形外科 杉原 泰洋 先生の手技動画集です。
トリガーポイント注射の対象となる筋肉は非常に多く存在します。治療頻度が特に高い部位、筋肉について解説しています。
トリガーポイント注射に使われる薬液について解説し、トリガーポイント注射の作用機序を説明します。
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