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トリガーポイント注射の作用機序と薬剤選択

トリガーポイント注射は、トリガーポイント治療の第一選択です。
トリガーポイント注射の作用機序を説明し、トリガーポイント注射に使われる
薬剤について解説します。

トリガーポイント注射とは

トリガーポイント注射は、トリガーポイントに薬剤を注射することでトリガーポイントを消失させる手技です。歴史を紐解くと、世界的には、局所麻酔薬、抗炎症薬およびボツリヌス毒素などが用いられてきました。薬剤の優劣については結論が出ていませんが、トリガーポイントは多様な病態を呈することが考えられますので、症例ごとに適切な薬剤を選択することが理想であると考えられます。なお、本邦における保険診療上は、トリガーポイント注射の薬剤には局所麻酔薬または局所麻酔薬を主剤とする薬剤を使用しなければなりませんので注意が必要です。トリガーポイント注射の治療上の意義は大きく、トリガーポイント注射の有効性を示唆する報告は多数あります。本邦においては、局所麻酔薬を主剤とする薬剤であるネオビタカイン®を用いたトリガーポイント注射の報告が最も多く、その有効性と安全性が報告されています。

トリガーポイント注射の主たる奏効機序は、痛みの悪循環を断つことです。すなわち、①侵害受容器の感作に関する因子を希釈、消去することによる痛み刺激の減弱化、②局所麻酔薬による、活性化した末梢神経活動の抑制、③トリガーポイントから上行するインパルスにより脊髄反射的に活性化していた運動神経活動および自律(交感)神経活動を不活性化することによる筋緊張の緩和および血管収縮の解除、④筋緊張の緩和および血管収縮の解除による血流の改善です。
トリガーポイント注射には局所麻酔薬が用いられることから一時的な鎮痛を得るための手技と誤解されがちですが、過敏化した筋・筋膜の環境をリセットし、痛みの悪循環を断ち切ることができるため、根治療法となりえます。

トリガーポイント注射に使用する薬剤

トリガーポイント注射の治療効果は、針の刺入および投与成分の相加であり1)、注入液量の影響も考えられています2)
トリガーポイント注射には、局所麻酔薬、局所麻酔薬を主剤とする薬剤(ネオビタカイン®)を中心に、副腎皮質ステロイドホルモン剤、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液製剤、ビタミン剤、生理食塩水などが混注されていることが推察されます。理想としては、トリガーポイントの病態に応じて、薬剤の特徴に応じて、適切な薬剤が選択されることです。トリガーポイントの病態は、病期(急性期、慢性期)、原因(筋の酷使・損傷、精神的なストレス)、患者の置かれた環境(トリガーポイントの原因は取り除かれているか、日常的に暴露されていないか)により多様であることが考えられるため、最適な薬剤を選択して混注することは困難かもしれません。しかしながら、薬剤の特徴を理解することは、適切な薬剤選択に近づけるためには重要であると言えます。

トリガーポイントでは、炎症性サイトカイン、発痛物質 etc. が増加

トリガーポイントでは、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ブラジキニン、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-8および腫瘍壊死因子α(TNF-α)の増加、pH の低下などが確認されておりこれらの因子が侵害受容器を感作させ、痛みを増強させています3)

局所麻酔薬の特徴

トリガーポイント注射の薬剤として、世界で最も使用されていると考えられます。膜電位依存性Na+チャネルの抑制と発痛物質の洗い流しにより、鎮痛と筋緊張の緩和が期待できます。局所麻酔薬には様々な種類がありますが、浸透圧が1.0から離れすぎないように薬剤を選択する方が良いとされています。

局所麻酔薬を主剤とする薬剤(ネオビタカイン®)の特徴

ネオビタカイン®は、トリガーポイント注射の薬剤として、日本で最も使用されています。有効成分として、局所麻酔薬(0.1%ジブカイン塩酸塩)、抗炎症薬(0.3%サリチル酸ナトリウム = NSAIDs)および0.2%臭化カルシウムを含有します。局所麻酔薬と抗炎症薬の両方の作用が期待できることに加え、サリチル酸ナトリウムと臭化カルシウムは、局所麻酔薬が効きにくい筋・筋膜痛の要素(酸感受性イオンチャネル ; ASICs)に対して効果を発揮し、鎮痛に寄与する可能性が示唆されています。なお、ネオビタカイン®は日本でしか販売されていません。

ネオビタカインの基礎データ

ネオビタカイン®はトリガーポイント注射に使用されることが多い薬剤ですので、トリガーポイント注射を想定した基礎データが収集されています。以下に紹介します。

ネオビタカイン®は、局所麻酔薬が無効な筋痛に対して鎮痛効果を示しました(ラット)2)

局所麻酔薬のジブカイン塩酸塩が無効である筋機械痛覚過敏が存在し、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)に施行されるネオビタカイン®のトリガーポイント注射にはサリチル酸ナトリウムや臭化カルシウムを介した鎮痛機序が存在する可能性が示唆されています。

実験方法

小動物用足関節運動負荷装置を用いてラット下腿伸筋群に伸張性収縮を負荷することで惹起された筋機械痛覚過敏に対し、ネオビタカイン®および各成分を筋内局所投与(20μL, 約3.5mL/50kg)することにより得られる鎮痛効果を調べました。薬物投与48時間前(-48hr)および24時間前(-24hr:伸張性収縮直前)における機械逃避閾値を平均することで算出したベースラインから、薬物投与直前の機械逃避閾値への低下幅を100%とした時の、薬物投与による閾値上昇率を算出し、薬効として評価しました。

用語解説 伸張性収縮負荷

伸張性(遠心性)収縮とは、筋が収縮しながらも引き伸ばされる状態を言います。日常的に、筋は伸張性収縮に暴露されています。筋に伸張性収縮負荷が繰り返し行われることにより、条件次第では、筋の微細構造および細胞骨格に損傷が生じることもあります4)。伸張性収縮の例として、階段を降りる時やジャンプ後の着地時の大腿四頭筋、ビールジョッキをゆっくりとテーブルに置くときの上腕二頭筋、ベンチプレスでバーベルを下ろす時の大胸筋4)、洗髪時の僧帽筋5)の活動などが挙げられ、また、走行時には殿筋群、下腿・下肢筋群が伸張性および短縮性収縮を繰り返し6)、収縮様式は複雑になります。近年報告されている伸張性収縮による筋機械痛覚過敏モデルは、MPSに特徴的な筋機械痛覚過敏を呈するだけでなく、索状硬結やトリガーポイント様の痛覚過敏点を有するものもあり7,8)、MPSの基礎研究に有用であると考えられています9)

サリチル酸ナトリウムと臭化カルシウムにより局所麻酔作用持続時間が延長しました(モルモット)10)

モルモット浸潤麻酔試験におけるネオビタカイン®の作用持続時間は、0.1%ジブカイン塩酸塩単独投与群に対し、有意(P<0.05)に延長しました。

実験方法

実験前日にバリカンでモルモットの背部を刈毛しました。実験当日、モルモットを腹臥位に固定し、正中線を挟んで約3cm四方の中で右2ヵ所および左2ヵ所の計4ヵ所(右上、左上、右下、左下)を2グラムの刺激針で刺激しながら、皮膚の反射性攣縮反応が良好な部位に印を付け、被験液0.1mLを皮内投与しました。効果の判定は、1部位を6回刺激し、反射性攣縮の反応回数が3回以下の場合を浸潤麻酔作用「有」と判断し、その作用持続時間を求めました。

ネオビタカイン®の局所麻酔作用は、0.5%、1%リドカイン塩酸塩よりも長く持続しました(モルモット)11)

モルモット浸潤麻酔試験におけるネオビタカイン®の作用は、1%リドカイン塩酸塩に対し、有意(p<0.01)に長く持続しました。

実験方法

実験前日にペントバルビタール麻酔下で、モルモットの背部被毛を正中線を挟んだ左右両側の前部および後部、計4ヵ所をそれぞれ4cm×5cmに除毛し投与部位としました。投与部位は27ゲージ注射針で軽く刺激して皮膚の反射性攣縮を常に起こすものを1群10部位使用し、被験液0.1mLを皮内投与しました。効果の判定は、1部位を6回刺激し、反射性攣縮の反応回数が4回以下の場合を浸潤麻酔作用「有」と判断し、その作用持続時間を求めました。

(まとめ)ネオビタカイン®のトリガーポイント注射

話 題 生理食塩水の筋注と慢性痛について

近年、生理食塩水を軟部組織へ注射する手技が報告されています。基礎研究(動物実験)では、酸性の生理食塩水を筋注することによる慢性痛モデル作成法が確立しています15)。酸性の生理食塩水を筋注すると、末梢の酸感受性イオンチャネル3(ASIC3)を介して中枢感作を惹起し、痛みは慢性化すると考えられています16)。生理食塩水の規格値は pH4.5~8.0 であり17)、酸性の生理食塩水をヒトに筋注することに対する安全性は確立していませんが、pH5.0の生理食塩水10mLを30mL/hの注入速度で20分間かけて筋注(持続注入)する場合は、慢性痛が惹起されない可能性が示唆されています18)

References

  1. Wong CS. Anesthesiol Res Pract. 2012 ; Article ID 492452
  2. ビタカイン製薬(株)社内資料;筋・筋膜性疼痛の神経機構
  3. Shah JP. J Bodyw Mov Ther. 2008 ; 12 ; 4 : 371-384.
  4. 遠藤隆志. 植草学園大学研究紀要. 2014 ; 6 : 5-13.
  5. 早田壮. 関西理学療法. 2010 ; 10 : 57-62.
  6. 仲谷政剛. バイオメカニズム学会誌 . 2014 ; 38 : 61-73.
  7. Itoh K. Jpn J Physiol. 2002 ; 52:173-180.
  8. Itoh K. Acupunct Med. 2004 ; 22:2-13.
  9. Mizumura K. J Musculoskelet Pain. 2010 ; 18:361-366
  10. ビタカイン製薬(株)社内資料;筋・筋膜性疼痛の神経機構
  11. ビタカイン製薬(株)社内資料;筋・筋膜性疼痛の神経機構
  12. Conklin KA. J Am Assoc Nurse Anesth. 1987 ; 55 : 36-44.
  13. Amann R. Eur J Pharmacol. 2002 ; 447 : 1-9.
  14. Baron A. Neuropharmacol. 2015 ; 94 : 19-35.
  15. Sluka KA. Muscle Nerve. 2001 ; 24 : 37-46.
  16. Sluka KA. Pain. 2003 ; 106 : 229-239.
  17. 第十七改正日本薬局方(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
    https://www.pmda.go.jp/files/000210787.pdf)(2019 年1月31日利用)
  18. Wang K. Scand J Pain. 2017 ; 17 : 260-266.

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