肩甲挙筋とトリガーポイント
肩甲挙筋のトリガーポイントは、肩こりの原因として極めて重要です。
本記事では、肩甲挙筋のトリガーポイントについて、詳しく解説します。
肩甲挙筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。
肩甲挙筋は日常生活で酷使され、多くの人がトラブルを抱えています。
したがって、トリガーポイントの治療と共に日常生活を見直すことが重要です。
肩甲挙筋の基礎知識
肩甲挙筋は頭と肩を結び、手綱のように頭部の上げ下げを調節しています。頭を持続的に下げた状態は、肩甲挙筋に悪影響を与えます。肩甲挙筋が単独で損傷を受けるケースは少なく、僧帽筋とセットで悪くなることが多いとされています。僧帽筋と胸鎖乳突筋は神経支配からも影響しあうため、結局、肩こり患者は、僧帽筋、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋の3点セットで治療をしなければならないことがよくあります。特に、頭痛のある肩こり症例では、まず、この3つの筋肉に優先順位をつけて治療されます。
神経支配
肩甲挙筋は、頸神経叢(C3~4)と肩甲背神経(C5)の神経支配をうけます。
解剖
- 【起始部】C1~4の横突起
- 【停止部】肩甲骨の棘根部から上角にかけての内側縁
肩甲挙筋の上部は胸鎖乳突筋に覆われ、下部は僧帽筋に覆われています。
働き
肩甲挙筋の主な働きは頭部の側屈と肩甲骨の引き上げ(肩の挙上)・回旋です。
肩甲挙筋のトリガーポイント
肩甲挙筋は、中心(セントラル)トリガーポイントと付属(サテライト)トリガーポイントで治療効果に差があります。中心トリガーポイントを探し出し、きちんと治療することが重要です。
トリガーポイントの位置と関連痛領域
肩甲挙筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。訴えのある関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。付属トリガーポイントは肩甲骨上角の付着部にできやすく治療がしやすいですが、症状を完全に取り去ることはできません。中心トリガーポイントは僧帽筋の深部にできやすく治療がしにくいですが、この中心トリガーポイントを取り去ることが、症状を完全に取り去るためには重要です。
- ①のトリガーポイントは、頚から肩への移行部にあり、僧帽筋に隠れているケースもあります。
- ②のトリガーポイントは、肩甲骨上角の斜め上あたりにあります。
- 関連痛領域は、トリガーポイントのある肩甲挙筋の周辺に強く現れます。一部は、肩甲骨内側縁に沿って放散します。一部は、肩峰に向かって放散します。
トリガーポイントの原因
肩甲挙筋は重い頭部とよく動く肩甲部をつなぐ役割をするため、非常にストレスがかかります。頭をまっすぐ正面に向けない態勢は、ほとんどすべて肩甲挙筋を酷使していると考えて大きな間違いではありません。
急性的な原因
- 突発的な事故
運転中に追突された場合のむちうち症では、肩甲挙筋にできたトリガーポイントが何年も見逃され、慢性的な痛みや障害が生じていることがあります。 - つまづき、転倒
つまづいたり、そのまま転倒する場合も、重い頭が振り下ろされるときに肩甲挙筋は引っ張られ、手をついた時には更なる衝撃が加わります。
慢性的な原因
- タイピング
タイピングは、筋電図研究からも明らかになっている肩甲挙筋の大敵です。タイピングにより、筋電活動が上昇し、疲労を伴うとさらに活動の振幅が増大することが報告されています。現代社会において、タイピングは非常に重要な作業ですが、重大な肩こりの原因であることは明白な事実です。しかも、ほとんどの人が、肩甲挙筋を酷使しない正しい姿勢でタイピングをしていません(というか、正しい姿勢でタイピングをすることは、ほぼ不可能)。タイピングの際は、どれほどブラインドタッチに長けた人でも、必ずある程度は頭が下を向き、肩甲挙筋はその頭を引っ張ります。そして、タイピングという作業は肩甲挙筋に筋電活動を惹起し、微細な筋線維単位で肩甲挙筋は酷使されます。すなわち、タイピングは、重い頭を引っ張るという大きな負担を肩甲挙筋にかけながら、さらに連発する小さい負担をかけ続けるということになります。 - 電話の受話器を頭と肩に挟みながら通話
肩甲挙筋は短縮し続けることになり、損傷します。これにタイピングが加わると、更に悪化します。 - 肩にかけるカバン
重いバックパック(リュックサック)、肩掛けストラップのついたカバン、これらは肩甲挙筋を傷めます。街を見渡すと、多くの人が肩甲挙筋を傷めながら歩いています。 - スポーツ
慣れない人がテニスなどのスポーツを急にやると、特にサーブやスマッシュの際に肩甲挙筋を傷めます。
トリガーポイントによる症状
肩甲挙筋のトリガーポイントでは、首の付け根付近の強い痛みやコリの訴えがあり、肩の後方と肩甲骨の内縁に沿って関連痛が放散します。肩甲挙筋にトリガーポイントができると、首を後ろに向ける動作に支障をきたします。
肩甲挙筋のトリガーポイントと関連する内臓
- 肝臓
- 胆嚢
- 心臓
- 胃