大殿筋とトリガーポイント
大殿筋のトリガーポイントは、腰痛の原因として極めて重要です。
本記事では、大殿筋のトリガーポイントについて、詳しく解説します。
大殿筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。
大殿筋は原始の人間の直立歩行に貢献し、現代の社会生活においては座位の犠牲になっています。
現代社会における姿勢の中心は座位です。パソコンもテレビも食事も映画鑑賞もお茶も着席して行います。その都度、上半身の下敷きになり、大殿筋は椅子との間で緩衝的な役割を果たしています。
これが日常生活で繰り返されることにより大殿筋は傷み、トリガーポイントが発生します。
大殿筋の基礎知識
大殿筋は、中殿筋・小殿筋とともに殿筋を構成します。小殿筋の上に中殿筋があり、中殿筋の上に大殿筋があります。大殿筋は、中殿筋の下半分くらいを覆います。大殿筋は3つの殿筋の中で最も大きい筋肉です。大殿筋の大きさは、中殿筋の2倍程度で、小殿筋の4倍程度です。殿筋群は股関節部の大部分を占める筋肉で、歩く時や走る時に重要な役割を担います。
神経支配
大殿筋は、下殿神経(L5~S2)の神経支配をうけます。下殿神経は仙骨神経叢から起こり大殿筋にのみ広がる神経です。殿筋の中でも下殿神経の支配を受けるのは大殿筋のみで、上殿神経の支配をうける中殿筋と小殿筋の神経支配とは独立しています。
解剖
- 【起始部】腸骨の殿筋面、仙骨の後面、胸腰筋膜、仙結節靭帯
- 【停止部】大腿骨の殿筋粗面、腸脛靭帯
働き
大殿筋の主な働きは、股関節における大腿の伸展、外旋、外転(上部線維)および内転(下部線維)です。
大殿筋のトリガーポイント
大殿筋のトリガーポイントは、仙骨との付着部付近の中央付近、坐骨結節の後方付近と尾骨の下部付近の3ヶ所によく見つかります。
トリガーポイントの位置と関連痛領域
大殿筋のトリガーポイントからの関連痛は殿部周辺にとどまります。大殿筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。訴えのある関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。
- ①のトリガーポイントは、仙骨にある起始部近くの殿溝の上端の付近にあります。
- 関連痛領域は、仙腸関節から殿溝に沿って強い痛みが出現し、外側および大腿後面へ放散します。
- ②のトリガーポイントは、坐骨結節付近にあります。
- 関連痛領域は、殿溝の下部、殿溝の上部(仙骨の尾側)、腸骨稜の外側に強く、臀部全体に放散します。
トリガーポイントの原因
大殿筋は急性・慢性の両方のストレスを受けやすい筋肉です。大殿筋にトリガーポイントができる急性的な原因として急激な過負荷が挙げられ、慢性的な原因としては日常生活様式が挙げられます。
急性的な原因
- 前のめりの姿勢で登山
大殿筋には、強い遠心性収縮が負荷されます。 - 水泳の際に、バタ足が伴う泳法を継続
大殿筋には、強い遠心性収縮が負荷されます。
特に冷たい水温の中で続けることにより、発症、悪化することが多いようです。
慢性的な原因
- 股関節を屈曲したまま眠る睡眠習慣
すなわち、赤ちゃんのような姿勢で眠ることは、大人の大殿筋には好ましくありません。 - お尻のポケットに物を入れた状態での持続的な着席
日本人は右利きが多いため、右のお尻ポケットに物を入れます。したがって、この問題は右の大殿筋でよく起こります。治療とともに日常的にお尻ポケットに物を入れる習慣を直せば良いので、この問題は取り除くことが比較的簡単です。 - 尾骨付近に体重をかけた状態での持続的な着席(すなわち、後ろのめりの着席)
②と③のトリガーポイントを活性化させやすいとされています。 - モートン病
日常的なハイヒールやインソールが合っていない場合によく起こります。したがって、この問題は女性に多く起こります。治療とともにハイヒールをやめたりインソールを見直したりする必要があります。 - 直接的な外傷
例えば、氷の上で滑って転ぶようなしりもちをつくと、最も表層の大殿筋は強打されて損傷し、トリガーポイントの原因となります。
トリガーポイントによる症状
大殿筋にトリガーポイントがあると、着席時に臀部に痛みを生じます。また、歩行時、特に坂道や階段を上がる際に痛みを生じることがあります。大殿筋のトリガーポイントから生じる痛みは仙腸関節障害により発生する痛みに似ているので、間違われることがあります。大殿筋にトリガーポイントがあることで、仙腸関節障害をきたす可能性は否定できませんので、いずれにせよ大殿筋のトリガーポイントは解消しておくことが重要です。大殿筋は最も表層にある大きい筋肉であるため、関連痛もトリガーポイント周辺に限局するため、治療されやすい(治療標的として見つけやすく、治しやすい)と言えます。
大殿筋のトリガーポイントと関連する内臓
- 心臓等の循環器系