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肩関節周囲炎

本記事の内容は、信頼性が高いと考えられる各方面の情報を元に記載していますが、医師の診察に代替・優先されるものではありません。患者様の治療に関しては医療機関を受診の上、医師の診断を仰いでいただけますようよろしくお願いします。

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とある患者と医者の診察現場
~ある晴れた昼下がりのクリニック内にて~

※この会話はフィクションです

医 師

(問診表とレントゲンを見ながら・・・)
どうされましたか?

患 者 さ ん

肩を動かしにくくて気になっていたのですが、急に痛みが出てきて辛いです。

医 師

それは、肩関節周囲炎かもしれませんね。40代50代なら四十肩・五十肩とも呼ばれますが同じものです。

患 者 さ ん

具体的には、どのような病気でしょうか?

医 師

急激な痛みは肩関節の周りの炎症ですね。痛みが和らぐと肩関節が硬くなってきます。

患 者 さ ん

どのような治療をすることになりますか?

医 師

時期によって治療を変えていくことになりますが、早め早めの治療が重要ですよ。痛みが治まるまでは安静と鎮痛を中心にしましょう。

患 者 さ ん

痛みが治まれば治療は終わりですか?

医 師

痛みが治まった後は、肩が動くようにしていく必要があるので、体操をしていきましょう。

(1か月後、痛みが和らいで・・・)

医 師

急激な痛みは治まったと思うので、体操をしていきましょう。

患 者 さ ん

実は、肩の筋肉を動かすと痛くて、体操がやりにくいと感じていました。

医 師

確かに、肩の筋肉にコリがありますね。このコリは「トリガーポイント」と呼ばれて痛みの原因にもなりますよ。

患 者 さ ん

今、痛みを楽にできる方法はありますか?

医 師

注射なら即効性が期待できますよ。

患 者 さ ん

どのような注射でしょうか?

医 師

トリガーポイント注射という保険診療です。肩のトリガーポイントに局所麻酔薬と抗炎症薬の入った薬剤を注射してみましょう。

患 者 さ ん

分かりました。よろしくお願いします。

医 師

少しチクッとしますよ。・・・。はい、今日は終わりです。

患 者 さ ん

すぐに終わりましたね。

医 師

トリガーポイント注射は簡便な治療法ですからね。痛みが楽になれば体操もやりやすいと思います。

患 者 さ ん

肩関節周囲炎について、もっと詳しく知りたいのですが、教えていただけますか。

医 師

このページをスクロールしていけば、詳しい解説が書かれていますよ。

肩関節周囲炎とは

肩関節周囲炎は、老化に伴う退行性変化を基盤として発症する有痛性の肩関節機能障害の総称です。一般的には、四十肩・五十肩として知られる疾患です。好発年齢は50歳代ですが、最近では30歳代や40歳代での発症も増えてきています。本邦では、全人口の2~5%が罹患します。肩関節周囲炎を発症すると肩関節の可動域制限により、肩関節周囲の筋肉が硬くなり、肩こりの原因となります。

肩関節周囲炎の症状

肩関節周囲炎の主たる症状は、肩関節周囲の痛みと肩関節の可動域制限です。これらの症状により、日常生活動作が影響を受けます。例えば、結髪、洗髪、結帯、睡眠のような日常のありふれた生活活動が障害されるため、ADLとQOLは低下します。なお、これらの症状は病期により異なります。肩関節周囲炎の病期は、炎症期・拘縮期・回復期に分類されます。両肩で同時に発症することは稀ですが、片側で発症すると、もう片方に負担がかかり発症しやすくなります。なお、いったん完全治癒すると、再発することはあまりないとされています。

炎症期

炎症期では、強い痛みが生じます。動作時のみならず、睡眠時や安静時も痛く、特段のきっかけなく急激に発症します。炎症期は、肩関節を下手に動かすことで痛みは増悪し治癒過程の影響するため注意が必要です。炎症期を過ぎれば、痛みは次第に治っていきます。

拘縮期

拘縮期は、肩関節の可動域制限が進行し、「拘縮」が成立していきます。これは、損傷して炎症を起こした軟部組織が、線維化や癒着を起こすためです。炎症は治まっていくので、炎症期の強い痛みは和らいでいきます。特に夜間痛の軽減が炎症期から拘縮期への移行の目安になります。

回復期

回復期では、文字通り症状が回復していきます。夜間痛はほとんどなくなり、肩の可動域の最後(最終域)で痛みが出るような、痛みが発生するタイミングや部位がはっきりしてきます。最終域の痛みは遷延することが多く自然治癒を期待しづらいため、積極的な治療介入が必要になります。完全治癒まで数か月を要することも少なくなく、治療の出口戦略を誤ると経過が逆戻りすることもあります。

肩関節周囲炎の症状

肩関節周囲炎の原因

肩関節周囲炎の原因は、老化に伴い肩関節の構成因子(骨、軟骨、腱、靭帯など)の退行性変化が基盤となります。加齢とともに肩関節は固くなり動きが徐々に悪くなるために、以前は問題なかった日常生活動作でも歪みがピシピシ蓄積していきます。固くなった肩関節には、日常生活の些細な動きでも過度な負担となり、そこで炎症が発生して急激に痛みが生じます。何か強烈なきっかけにより発症するというよりは、日常生活習慣の蓄積(運動不足や職場での同一姿勢)により筋骨格系の動きの減弱によって可動域の低下が老化による退行性変化に加味され、動きに対して脆弱化することが原因です。炎症後の拘縮は、肩関節を構成する組織の癒着と筋緊張により成立します。例えば、肩峰下包、棘上筋と肩甲下筋腱下包、上腕二頭筋群と上腕二頭筋長頭腱の癒着や、棘上筋、棘下筋、小円筋の緊張(トリガーポイントの発生)が認められます。

肩関節周囲炎の原因

トリガーポイントについて詳しく知りたい方は、次の関連記事をご参照ください。

肩関節周囲炎の治療法

肩関節周囲炎は、急激な痛みと肩関節の可動域制限という症状からADLとQOLを著しく低下させることがあり、これらの症状を改善するための治療が重要になります。肩関節周囲炎は自然治癒が期待できる疾患ですが、患者自身の判断で放置されたり、不適切に動かしたりすると病状が悪化し、日常生活に支障をきたすばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあり、その後の人生に大きな影響を与えることがあります。したがって、適切な時期に適切な治療が施されることは重要です。肩関節周囲炎の治療には、薬物療法、運動療法、理学療法などがあります。ほとんどの場合、これらの保存療法によって改善するため外科的治療(手術)は必要ありません。手術が適用されるのは難治性の拘縮ですが、侵襲性の小さい肩関節鏡視下授動術などを選択できます。肩関節周囲炎の治療は、経過・病期に合わせて柔軟に対応していく必要があり、治療期間が長くなることから(数か月~1年)、患者の治療へのモチベーションも重要な要素になります。適切な治療が施されれば、ほとんどの場合、元通りの生活(スポーツも含め)ができるようになります。しかし、重症化してしまうと、3年経過後も40%に症状が残存するという報告があり、早期に適切な治療を施すことの重要性を物語っています。

炎症期

痛みが強い炎症期の治療は、安静と鎮痛です。安静は、三角巾を使用して肩を固定するなど、負担をかけないよう安静を保ちます。鎮痛は、NSAIDsの内服や貼付、局所麻酔薬やステロイド、ヒアルロン酸の注射が使用されます。この時期は不適切な運動により病状(炎症)が悪化することがあるため、まず医師の診断を仰ぐ必要があります。肩関節の硬化を防ぐために、痛みに配慮しながらストレッチを施行することもありますが、理学療法士の管理下で適切に行うことが重要です。この時期は温めたり冷やしたりという温熱療法は、悪化の要因になることがあります。

拘縮期

痛みが和らぐ拘縮期の治療は、肩関節の拘縮を防止し、肩関節の可動域を広げるための運動療法を施行します。同時に、血行改善のための温熱療法(入浴・ホットパック)も並行します。肩関節の拘縮は、肩関節包の線維化に加え、周辺組織の硬化・癒着が考えられます。したがって、理学療法士の管理下において、肩関節周囲の筋肉、腱のような組織の硬化・拘縮・癒着を取り除く運動療法に加え、肩関節周囲の筋肉にトリガーポイントを確認する場合はトリガーポイント注射も施行されます。この時期に患者自身が自宅でできる運動療法としては、Codman体操(振り子運動)があります。入浴の際は、肩まで浸かることが重要です。

回復期

拘縮期に適切な治療が施された場合は、スムーズに回復期に入れます。運動療法による積極的な介入により、肩関節可動域のさらなる拡大を目指します。同時に、肩関節周囲の筋力強化や肩甲骨の安定化といった腕を挙上・回旋させるための基盤づくりを理学療法士の管理下で行っていき、職場復帰やスポーツの再開などの最終目標を達成していきます。筋緊張やトリガーポイントの存在は常に考えられるので、トリガーポイント注射により筋肉の痛みを減らしながら取り組むと運動療法がやりやすくなり、可動域も楽に広がることがあります。

肩関節周囲炎の治療法

肩関節周囲炎の予防法

肩関節周囲炎の原因は老化に伴う肩関節周囲組織の退行性変化ですので、人間が老化に抗うことをできない以上、根本的な解決策はありません。しかしながら、リスクを下げ、症状を低減することは可能です。肩関節は複雑であるがゆえに血管も豊富にあります。したがって、生活習慣の良し悪しに伴う血流の振れ幅は大きく、血行を良くするための行動は肩関節周囲炎の発症に対して抑制的に働きます。まず、日頃から上半身を使う適度な運動習慣は重要です。また、冷えは血行を悪くしますので、入浴の際は肩まで浸かる、寒いときは肩掛けを使うといった、肩への細かい気配りの長年の蓄積により、結果が大きく変わってくることが考えられます。

肩関節周囲炎の予防法

肩関節周囲炎の自然経過・予後

痛みが先行し、追って肩関節の可動域制限が進行する自然経過をたどります。自然緩解が期待できる疾患ですが、無治療の場合は治癒までに4年を要するという報告があったり、治療をしても7年後に半数で症状の残存が見られたり、糖尿病のようなリスクファクターの存在で発症しやすく治癒過程も遷延することが知られているため、自然治癒力に依存するのではなく、適切かつ積極的な治療介入による、より良好な予後を目指すことは重要です。

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