中殿筋とトリガーポイント
中殿筋のトリガーポイントは、腰痛の原因として極めて重要です。
本記事では、中殿筋のトリガーポイントについて、詳しく解説します。
中殿筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。
中殿筋のトリガーポイントは、小殿筋と同様に日常生活に起因することが多く、トリガーポイントの治療と共に日常生活を見直すことが重要です。
小殿筋のトリガーポイントについて詳しく知りたい方は、「小殿筋のトリガーポイント」を参照して下さい。
中殿筋の基礎知識
中殿筋のトリガーポイントは、小殿筋と同様に日常生活に起因します。中殿筋は、大殿筋・小殿筋とともに殿筋を構成します。中殿筋は大殿筋の上方・深部に位置し、中殿筋の半分程度は大殿筋に覆われています。中殿筋の深部には小殿筋があります。中殿筋の大きさは、大殿筋の半分程度で、小殿筋の2倍程度です。殿筋群は股関節部の大部分を占める筋肉で、歩く時や走る時に重要な役割を担います。中殿筋の筋線維の走行は、表層部と後方で異なり、筋線維の走る方向によって果たす役割も異なります。したがって、中殿筋のトリガーポイントはできる部位により、原因や症状が異なる可能性があります。
神経支配
中殿筋は、上殿神経(L4~S1)の神経支配をうけます。上殿神経は仙骨神経叢から起こり中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋に広がる神経ですので、中殿筋が悪くなると、小殿筋や大腿筋膜張筋にも影響を与える可能性があります。なお、大殿筋は下殿神経の支配ですので、 同じ殿筋でも中殿筋と大殿筋の神経支配は独立しています。
解剖
- 【起始部】腸骨の殿筋面
- 【停止部】大転子の外側
中殿筋は、小殿筋と同様に、広く薄い筋組織が層状になっています。骨盤外面のほぼ全部に付着し、大腿骨の上端まで伸びています。
働き
中殿筋の主な働きは、股関節における大腿の回転・回旋です。歩行時は骨盤を水平に安定させます。中殿筋は筋線維の走行が複雑ですので、場所によって、働きが異なります。
前部線維の働き
- 大腿に対して、外転、屈曲、内旋させます。
- 骨盤に対して、前傾、下制します。
中部線維の働き
- 大腿に対して、外転させます。
- 骨盤に対して、下制します。
後部線維の働き
- 大腿に対して、外転、伸展、外旋させます。
- 骨盤に対して、後傾、下制します。
中殿筋のトリガーポイント
中殿筋のトリガーポイントは、患側を上にして横になり、両足を屈曲して探すと見つかりやすいとされており、腸骨稜に沿って下部に認められます。
トリガーポイントの位置と関連痛領域
中殿筋のトリガーポイントは、 殿部や大腿上部の外側に関連痛を放散させます。中殿筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。訴えのある関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。
- ①のトリガーポイントは、仙腸関節の筋腹の後方にあり、腸骨稜下に見つかります。
- 関連痛領域は、臀部全体に放散しますが、腸骨稜の下部~仙腸関節~仙骨のあたりに強く現れます。
- ②のトリガーポイントは、腸骨稜中央の下方にあります。
- 関連痛領域は、臀部全体から大腿後面の上部にかけて放散しますが、殿筋の外側部と中部に強く現れます。
- ③のトリガーポイントは、上前腸骨棘の付近で、腸骨稜のすぐ下にあります。
- 関連痛領域は、仙骨を中心に腸骨稜に沿って外側に放散します。
トリガーポイントの原因
中殿筋は急性・慢性の両方のストレスを受けやすい筋肉です。中殿筋にトリガーポイントができる急性的な原因として急激な過負荷が挙げられ、慢性的な原因としては日常生活様式が挙げられます。
急性的な原因
- スポーツや過度のウォーキングによる殿筋の酷使
- 転倒による損傷
慢性的な原因
- お尻のポケットに物を入れた状態での持続的な着席
日本人は右利きが多いため、右のお尻ポケットに物を入れます。したがって、この問題は右の中殿筋でよく起こります。治療とともに日常的にお尻ポケットに物を入れる習慣を直せば良いので、この問題は取り除くことが比較的簡単です。 - 長時間の車の運転
アクセル、ブレーキは右足操作です。したがって、この問題は右の殿筋でよく起こります。車の運転はやむを得ない事情であることが多い(仕事中に車を運転する、通勤距離が長いが電車などの代替手段がないなど)ので、この問題は取り除くことが難しく、長期化することがよくあります。 - モートン病
日常的なハイヒールやインソールが合っていない場合によく起こります。したがって、この問題は女性に多く起こります。治療とともにハイヒールをやめたりインソールを見直すしたりする必要があります。 - 仙腸関節の機能不全
仙腸関節は、文字どおり仙骨と腸骨の間の関節で、数ミリの動きがあります。この数ミリの動きができなくなることで歪(ひず)みが蓄積し、腸骨の殿筋面に起始部をもつ中殿筋はその影響を受け、悪くなります。
その他、先天性の原因
- 下肢の長さに左右差がある場合
下肢の長さが左右で異なると、補正しようとして片側の殿筋が緊張しつづけることがあり、悪くなります。
トリガーポイントによる症状
中殿筋のトリガーポイントは典型的な腰痛(殿部や大腿上部の痛み)の原因となりますが、それ以外にも大腿側面や股関節の前面方向へも痛みが放散することがあります。中殿筋のトリガーポイントが原因の腰痛の場合、湿布薬やパップ剤のような貼付剤の有効成分がトリガーポイントまで到達するには遠く、また、関連痛領域に貼付されるケースが多いと考えられます。適切な場所(トリガーポイントの上)に貼付剤が貼られたとしても、その有効成分は豊富に毛細血管がある分厚い大殿筋を超えて、中殿筋に到達せねばなりません。
中殿筋のトリガーポイントと関連する内臓
中殿筋のトリガーポイントと関連する内臓は特にありません。