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多裂筋とトリガーポイント

多裂筋のトリガーポイントは、肩こり・腰痛の原因として極めて重要です。
本記事では、多裂筋のトリガーポイントについて、詳しく解説します。
多裂筋のトリガーポイントについて興味のある方は是非ご覧ください。

多裂筋の基礎知識

多裂筋は深層にある傍脊柱筋で、脊柱に対して対角線に走る短い筋肉です。深層にある他の傍脊柱筋(半棘筋、回旋筋)とともに、各頚椎の位置とアライメントにおいて重要な役割を担います。

多裂筋の基礎知識

神経支配

多裂筋は、頚、胸、腰の脊髄神経後枝の神経支配を受けます。

解剖

  • 【起始部】椎弓板(頸椎関節突起、胸椎横突起、腰椎乳頭突起、仙骨の後面)
  • 【停止部】起始部から3つか4つ上のレベルの椎骨

働き

多裂筋は脊柱の上から下までに付着しているため、その役割は多彩です。基本的には他の傍脊柱筋とともに脊柱の動きを司ります。前かがみになった身体を引き起こすとき、身体を回旋させるときだけでなく、単に直立姿勢を維持するときにも働きます。また、咳をすると呼吸をサポートします。加齢とともに多裂筋も他の傍脊柱筋も弱くなり、身体が前かがみになる人もいます。

多裂筋のトリガーポイント

多裂筋のトリガーポイントは強烈な痛みを生じます。多裂筋のトリガーポイントが活性化すると、わずかな動きでも激痛を生じ、身動きが取れなくなります。年齢にもよりますが、数分でいったん落ち着くこともあるため、多裂筋のトリガーポイントが原因の激痛であれば、すかさずストレッチなどで筋肉を動かしたり伸ばしたりすることが大切です。また、トリガーポイントが疑われず、脊柱の異常を調べられることがあります。

トリガーポイントの位置と関連痛領域

多裂筋のトリガーポイントは、頸部から腰部の脊柱周辺の広い範囲に関連痛を放散させます。基本的には、トリガーポイントの発生した高さに位置する脊柱周辺に現れますが、トリガーポイントが腰部にあるときは、そのトリガーポイントの位置よりも少し下部に生じることが多いとされています。多裂筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。訴えのある関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。

トリガーポイントの位置と関連痛領域
  • ①のトリガーポイントは、C4~C5の高さにあります。
    • 関連痛は、後頭下部、肩甲骨内側縁および上縁に放散します。特に後頭下部と肩甲骨内側縁に強く現れます。
  • ②のトリガーポイントは、T4~T5の高さにあります。
    • 関連痛は、トリガーポイントの位置の背側に現れます。痛みは局所的です。
  • ③のトリガーポイントは、L2の高さにあります。
    • 関連痛は、トリガーポイントの位置の背側から臀部にかけてと、腹部に現れます。④のトリガーポイントよりは上に現れます。
  • ④のトリガーポイントは、S1の高さにあります。
    • 関連痛は、トリガーポイントの位置の背側から臀部にかけてと、腹部に現れます。③のトリガーポイントよりは下に現れます。
  • ⑤のトリガーポイントは、S4の高さにあります。
    • 関連痛は、トリガーポイントの位置の背側(尾てい骨付近)に現れます。痛みは局所的です。

トリガーポイントの原因

多裂筋は急性・慢性の両方のストレスを受け、そのストレスの内容は多彩です。 背中が反る方向に抗する力(つまり、前かがみになるような力)が多裂筋のストレスになります。

急性的な原因

  • 急いで重いものを持ち上げる、押す、引っ張る
    多裂筋に限らずではありますが、「急に~」というのは筋肉にとってよろしくなく、トリガーポイントの形成につながります。
  • 突発的な事故

慢性的な原因

  • 日常的な前かがみの作業
    多裂筋のような傍脊柱筋は常に緊張した状態になり、トリガーポイントの形成につながります。
  • 人間工学的によろしくない職場環境
    古い事務所などにあるガタガタの椅子は、脊柱のバランスを保つために常に多裂筋を酷使します。机といすの高さが合っていないとストレスがかかります。
  • ハムストリングスの硬化
    ハムストリングスが硬くなると、骨盤が下がって歩行が不自然になり、脊柱をまっすぐ維持しようとする多裂筋にストレスがかかります。このような場合は、ハムストリングスも一緒に治療しなければ、多裂筋のトリガーポイントはなかなか解消しません。
  • 長時間の座位・立位
    長時間動かないというのは多裂筋のような姿勢を維持する筋肉にとって、良いことはありません。
  • 腰方形筋や腸腰筋のトリガーポイント
    腰方形筋や腸腰筋は多裂筋の存在する位置に関連痛(悪影響)を送ります。その結果、多裂筋にサテライトトリガーポイントができる可能性があります。
    腰方形筋や腸腰筋のトリガーポイントについて詳しく知りたい方は、「腰方形筋とトリガーポイント」「腸腰筋とトリガーポイント」を参照してください。

トリガーポイントによる症状

多裂筋にトリガーポイントができると、頸部~背部~腰部の脊柱周辺に強烈な痛みが発生し、様々な動作に支障をきたします。

  • 脊柱の動きに問題が起きる
    前屈、側屈、後屈、回旋、いずれの動きも困難になります。
    靴を履いたり、ごみを拾ったりという前かがみの姿勢は日常頻繁にありますが、困難になります。
    ひどくなると、直立姿勢の維持も困難になります。
  • 低い位置から立ち上がれない
    立ち上がる際は傍脊柱筋にも力が入ります。多裂筋にトリガーポイントができると、特に低い位置から立ち上がる際に支障をきたします。
  • 車の乗り降りの際に苦痛を生じる
    車を運転する職業の方は、かなりのストレスになります。

多裂筋のトリガーポイントと関連する内臓

  • 心臓
  • 気管支

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