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骨粗鬆症

本記事の内容は、信頼性が高いと考えられる各方面の情報を元に記載していますが、医師の診察に代替・優先されるものではありません。患者様の治療に関しては医療機関を受診の上、医師の診断を仰いでいただけますようよろしくお願いします。

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とある患者と医者の診察現場
~ある晴れた昼下がりのクリニック内にて~

※この会話はフィクションです

医 師

(問診表とレントゲンを見ながら・・・)
先日、骨粗鬆症のお薬を出しましたが、背中や腰の痛みは良くなりましたか?

患 者 さ ん

背中の痛みは良くなったのですが、腰の痛みは残っています。

医 師

他に気になる症状はありませんか?

患 者 さ ん

太ももの後ろ側に痛みやしびれがあります。

医 師

坐骨神経痛のような症状ですね。背骨や下半身の筋肉が原因になることが多い症状です。

患 者 さ ん

具体的には何が原因ですか?

医 師

例えば、筋肉だと、「トリガーポイント」というコリが原因になりますよ。

患 者 さ ん

お尻の筋肉を押すと痛いです。

医 師

医師確かに、お尻の筋肉にコリがありますね。このコリが「トリガーポイント」です。お尻のトリガーポイントは腰痛や坐骨神経痛の原因になりますよ。

患 者 さ ん

今、痛みを楽にできる方法はありますか?

医 師

注射なら即効性が期待できますよ。

患 者 さ ん

どのような注射でしょうか?

医 師

トリガーポイント注射という保険診療です。お尻のトリガーポイントに局所麻酔薬と抗炎症薬の入った薬剤を注射してみましょう。

患 者 さ ん

分かりました。よろしくお願いします。

医 師

少しチクッとしますよ。・・・。はい、今日は終わりです。

患 者 さ ん

すぐに終わりましたね。

医 師

トリガーポイント注射は簡便な治療法ですからね。

患 者 さ ん

骨粗鬆症とトリガーポイントは関係があるのですか?

医 師

直接的な因果関係はないかもしれませんが、そもそも中年以降の女性にはトリガーポイントが見つかる場合も多いです。これからは、骨粗鬆症のついでにトリガーポイントも治療していきましょう!

患 者 さ ん

骨粗鬆症について、もっと詳しく知りたいのですが、教えていただけますか。

医 師

このページをスクロールしていけば、詳しい解説が書かれていますよ。

骨粗鬆症とは

  • 骨粗鬆症は、骨が脆弱になり骨折する病気
  • ADL低下、QOL低下の原因
  • 高齢者の骨折の原因(寝たきりになる)
  • 超高齢化社会では対策が急務

骨粗鬆症は、骨密度が低下することで骨が脆(もろ)くなり、骨折リスクが上昇する疾患です。骨に含まれるカルシウムの減少や、骨の新陳代謝の変化により微細構造に異常をきたします。骨粗鬆症および骨粗鬆症を基盤とする病態により自立が障害され、日常生活に必要な動作に支障をきたし、QOLが低下します。初期は無症状であることが多いですが、悪化すると脊椎や大腿骨の骨折が生じます。病状が進行すると、僅かな力でも骨折するくらいに骨は脆弱になり、例えば福祉施設での日常の介護でも骨折することがあります。骨粗鬆症は高齢者の骨折の原因になることから健康寿命の維持においての阻害要因となっており、超高齢化社会を迎える日本にとって骨粗鬆症への対策は重要なものとなっています。骨粗鬆症には、閉経後の卵巣機能低下が原因で発症する「閉経後骨粗鬆症」と疾患による影響やステロイドの内服などに伴う「続発性骨粗鬆症」があります。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症の疫学

  • 本邦における40歳以上の罹患者数は1,280万人
  • 1年間の新規発生数は97万人
  • 閉経後の女性に多い
  • 75%以上は女性

本邦における40歳以上の骨粗鬆症の罹患者数は1,280万人(男性300万人、女性980万人)と推定されています。腰椎の診察により骨粗鬆症と診断された数は640万人(男性80万人、女性560万人)、大腿骨頸部の診察により骨粗鬆症と診断された数は1,070万人(男性260万人、女性810万人)です。1年間の新規患者の発生数は、97万人(男性16万人、女性81万人)と推定されています。特に、閉経後にホルモンバランスの変化した女性に多く認められ、患者数は高齢化とともに増加の一途をたどっています。

骨粗鬆症の疫学

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症の症状は、骨折と骨粗鬆症性疼痛です。骨折するまで自覚症状がないことも多くあります。

骨折

骨強度の低下により腰椎や胸椎の椎体骨折、大腿骨頸部の骨折および手首の橈骨遠位端骨折がよく起こります。骨折による痛みのみならず、日常生活に支障をきたし、活動性が落ちることで全身レベルで病状が進行するきっかけになります。すなわち、骨強度の維持は身体運動による刺激が重要ですが、骨折はこの全身活動性を著しく低下させます。椎体が圧迫骨折することで、背中が丸くなったり、身体が全体的縮んだりという見た目の変化も起こります。

骨折リスク評価(FRAX)

FRAX(Fracture Risk Assessment Tool)はWHOが公表している10年間の骨折確率を評価するツールです。インターネット上で公開されています(https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3)。潜在的に骨折リスクの高い患者を判別するために用いられ、骨密度を測定できない場合でも骨折確率を求めることができます。骨粗鬆症があると、50歳~70歳の骨折リスクが2~3倍に上昇します。

痛み

骨粗鬆症では、明らかな外傷(骨折)がなくとも慢性的な痛みの訴えがあることが経験的に知られてきました。骨粗鬆症性の痛みは、日常生活での動作中に発生します。例えば、歩行や立ち上がり、寝返りのような動作により、腰背部に痛みが発生します。そのメカニズムは長らく不明でした。近年、この痛みのメカニズムは、骨代謝異常に加え、末梢神経系と中枢神経系の要素が絡みあう複雑な病態であることが明らかになってきています。

【参考】骨粗鬆症の痛みのメカニズム

骨粗鬆症では、エストロゲンの体内濃度の低下とエストロゲン受容体の発現減少を基盤とする生体環境の変化により痛みが出現します。まず、エストロゲンは破骨細胞に対して抑制的に働きますので、エストロゲンが欠乏することにより破骨細胞の活動性が高まります。破骨細胞の骨吸収メカニズムは、骨局所における酸の産生による骨成分の分解です。したがって、破骨細胞の活動性が高まると骨の局所環境が酸性化し、Acid Sensing Ion Channels(ASICs)が刺激されたり、Transient Receptor Potential Vanilloid 1(TRPV1)が活性化されたりします。また、破骨細胞の活動性が上がることで炎症反応が惹起され、IL-1、6、TNF-αやプロスタグランジンEの産生が骨局所において亢進します。骨局所では、これらにより知覚神経の興奮性が高まり、痛みが発生します。さらに、エストロゲンは脊髄後角におけるセロトニン受容体の発現を制御しており、欠乏するとその発現が抑制されます。その結果、下行性疼痛抑制系の働きが弱まり痛みが抑制されなくなります。また、エストロゲンは後根神経節(DRG)におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の産生を抑制しています。CGRPは神経原性炎症に関与しており、軸索反射により知覚神経の自由神経終末から逆行性に放出され局所の炎症反応を惹起します。エストロゲンの欠乏はCGRPの産生増加を引き起こし、神経原性炎症が亢進します。

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症の自然経過

骨粗鬆症の自然経過は、閉経に伴うエストロゲンの急激な欠乏とともに始まります。20~40歳くらいの腰椎の骨密度は、45~49歳で2%減、50~54歳で10%減、55~59歳で18%減と著しく減少し、他の骨強度規定因子も30~40代をピークに減少に転じます。骨粗鬆症と診断されるレベルの骨強度の低下により症状が出始め、骨折により予後は厳しいものになります。

骨粗鬆症の予後

骨粗鬆症の予後を決定する最大の危険因子は骨折であり、その予後は不良です。例えば、要介護・寝たきりの10~15%は骨粗鬆症性骨折が原因です。また、骨粗鬆症性骨折は生命予後にも影響を与えます。65歳以上の骨折は心血管・脳血管疾患の死亡率を上昇させます。大腿骨頸部骨折を発症すると、単にADLやQOLを低下させるだけでなく、約10%は発症後1年以内に死亡します。

骨粗鬆症の原因

骨は脊椎動物の骨格を構成する固い組織です。骨では常に新陳代謝が起こっており、古い骨が取り壊されて吸収され(骨吸収)、新しい骨が形成(骨形成)されて置き換わっています。これを骨代謝と言い、骨代謝のサイクルが崩れることで骨密度(骨強度)が低下し、骨粗鬆症は発症します。

骨強度の低下メカニズム

骨粗鬆症の本体は骨強度の低下です。骨強度は、骨密度と骨質から決まります。加齢による体内環境の変化により、骨密度と骨質は低下します。

骨密度は、骨代謝(骨吸収と骨形成)のバランスで決まります。骨質は、骨の素材的な質と構造的な質により決まります。

骨強度は、骨密度の2乗に比例すると言われています。また、骨強度の70%は骨密度に依存し、30%は骨質に依存すると考えられています。

骨強度 = 骨密度の2乗 + 骨質

骨密度の低下メカニズム

骨密度の低下は、骨吸収が骨形成を上回ることで生じます。骨吸収は、加齢により亢進します。特に、骨粗鬆症の多数を占める閉経後骨粗鬆症では、女性ホルモンであるエストロゲンが閉経により欠乏し、骨吸収が亢進することが知られています。これは、エストロゲンにより破骨細胞の分化・成熟と活動性が抑制されていることが理由です。加齢によりエストロゲンの抑制が外れると、破骨細胞が活性化し骨吸収は亢進します。また、加齢により骨芽細胞機能は低下し、骨形成も低下します。骨の材料となるカルシウムの消化管からの吸収能も加齢とともに低下します。このように、加齢とともに骨吸収は亢進し、骨形成は低下することで、骨密度は低下していきます。

骨質の劣化メカニズム

骨質は、骨代謝に依存し、材質特性と構造特性により決まります。材質特性と構造特性は、骨芽細胞の機能と周辺環境により決まります。加齢により骨芽細胞の機能は劣化し、骨形成の周辺環境は悪化するために骨代謝のバランスは崩れ、骨質は劣化します。骨芽細胞や環境因子をなるべく若く保つためには、酸化ストレスや糖化ストレスの軽減、カルシウム、ビタミンDおよびKの充足、適度な日光浴と運動などが重要です。

ホルモンによる影響

加齢により体内のホルモン環境は変化します。骨粗鬆症に影響を与えるホルモンには、女性ホルモン(エストロゲン)とカルシウム調節ホルモン(副甲状腺ホルモン、カルシトニン)があります。

エストロゲン

骨吸収を抑制し、骨形成を促進するため、骨強度を高める働きがあります。エストロゲンに分類されるホルモンには、エストロン、エストラジオール、エストリオールがあります。女性は閉経によりエストロゲンの分泌が急減するため、男性よりも骨粗鬆症の発症率は高いものとなります。

副甲状腺ホルモン

副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を調節します。血中へのカルシウムの供給源は骨です。高齢者ではカルシウムの吸収能が低下するため、血中のカルシウム濃度は低下する傾向があり、副甲状腺ホルモンの働きにより、骨から血中へカルシウムが供給されます。その結果、骨強度は低下することになります。

カルシトニン

カルシトニンには骨吸収抑制作用があります。加齢により、カルシトニンの分泌は低下するため、骨吸収の抑制が効きにくくなり、骨強度は低下することになります。カルシトニンは骨吸収抑制作用に加えて、鎮痛効果を有するため、骨粗鬆症に対する治療薬として製剤化されています。

加齢による影響

加齢により、ホルモン分泌を変化させるだけでなく、消化管機能も衰えます。その結果、骨代謝に必要な栄養分の吸収効率が低下するため、骨粗鬆症のリスクファクターになります。

栄養素による影響

骨粗鬆症の原因となる栄養素には次のようなものがあります。

ビタミンDの不足

ビタミンDは生体内で代謝されて活性型となり働きます。活性型ビタミンDは、消化管からのカルシウムの吸収を高めます。

ビタミンKの不足

ビタミンKは、骨芽細胞で合成される骨基質タンパクのオステオカルシンが骨基質に取り込まれる過程に働きます。

リンの過剰摂取

リンの過剰摂取は、カルシウムの吸収を阻害します。

塩分・糖質の過剰摂取

塩分や糖質を過剰摂取すると、カルシウムの尿中への排泄量が増加します。

運動不足による影響

骨密度は、骨の長軸方向への刺激強度と相関関係があると言われています。したがって、運動不足は骨密度の低下を招きます。運動の種類は、水泳よりもウォーキングやジョギングのような、縦に力が加わる運動の方が骨密度を上げる効果があります。

遺伝による影響

骨密度への遺伝の影響は大きく、40~80%とされています。したがって、家族に骨粗鬆症の方がいると、発症率は高くなると言えます。具体的に分かりやすい因子としては、やせ型である、閉経の時期が早い、のような例が挙げられます。

疾患や治療薬による影響

次に示す疾患やその治療が原因で続発性骨粗鬆症を発症します。

  • 膠原病;関節リウマチ
  • 内分泌性・代謝性疾患;原発性副甲状腺機能亢進症、Cushing症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病、慢性腎臓病など
  • 薬剤性;ステロイド、抗けいれん薬、ワルファリン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、メトトレキサートなど
  • 不動性;安静臥床、廃用症候群、骨折など

骨粗鬆症の予防法・治療法

骨粗鬆症は予防が極めて重要な疾患です。骨粗鬆症は長い年月をかけて進行する疾患です。したがって、自覚症状が現れてから対処するのでは、長い年月の蓄積を挽回できません。骨粗鬆症の予防は、治療と同様に生活指導、栄養指導、運動指導という日常生活の3要素の改善指導に加え、薬物療法が行われます。予防の場合、日常生活の改善指導が薬物療法よりも優先されます。治療は、骨折の予防が目的になります。

生活指導

基本は規則正しい健康的な生活です。一般常識的に不健康とされる生活要因を取り除くだけでも効果が期待できます。

  • 禁煙、受動喫煙の回避
  • 節度ある飲酒
  • 規則正しく十分な睡眠
  • 偏食せず、何でも食べる(特に次の項目に示す栄養素を意識して摂取する)
  • 活動性の維持、定期的・継続的に運動する
  • 太陽光を適度に浴びる
骨粗鬆症の予防法・治療法

栄養指導

カルシウム、ビタミンDを十分に摂取することを中心にに、ビタミンK、たんぱく質を適切に摂取する必要があります。また、リンや塩分・糖質の過剰摂取は避ける必要があります。

カルシウムを豊富に含む食品

骨粗鬆症患者に求められるカルシウムの1日摂取量は800mgです。日本人女性の平均の1日摂取量は500mgで、300mg不足しています。この不足分を積極的に補う必要があり、次の表に示す食材を用いれば効率的にカルシウムを摂取することができます。欧米では1日あたり1,000mgを超える量のカルシウムを摂取することが推奨されていますが、摂取しすぎると、心筋梗塞のリスクを上げることが指摘されているため注意が必要です。

食品群 食品名 カルシウム含有量(mg / 100g) 単位当たりの重量
乳製品牛乳110コップ1杯(200g)
ヨーグルト1201パック(100g)
プロセスチーズ6301切れ(20g)
野菜類小松菜1701束(280g)
菜の花1601束(200g)
水菜2101束(200g)
カブの葉190-
モロヘイヤ2601株(10g)
切干大根540煮物1食分(15g)
海藻類ひじき1400煮物1食分(10g)
魚介類さくらえび(素干し)2000大さじ1杯(5g)
いわし(丸干し)14001尾(35g)
ししゃも3311尾(15g)
しじみ1301個(0.8g)
豆類木綿豆腐1201丁(300g)
納豆901パック(50g)
厚揚げ2401枚(200g)
芋類さつまいも401本(450g)
果物類いちじく261個(70g)
91個(240g)
パイナップル101個(700g)
レモン71個(100g)
キウイ331個(100g)
きんかん801個(18g)
カルシウムを豊富に含む食品

ビタミンKを豊富に含む食材

ビタミンKはオステオカルシンが骨基質に取り込まれる際に働きます。オステオカルシンは骨を形成する非コラーゲン性のたんぱく質で25%程度を占めるため、骨の構成因子としては影響の大きい因子の一つです。ビタミンKの1日あたりの推奨摂取量は250~300μgです。ビタミンKは脂溶性ビタミンですが、過剰摂取による有害事象はほとんどありません。

食品群 食品名 ビタミンK含有量(µg / 100g) 単位当たりの重量
野菜類モロヘイヤ6401株(10g)
小松菜2001束(280g)
ほうれん草2701株(45g)
キャベツ781個(1,000g)
ブロッコリー1601株(240g)
ニラ1801本(10g)
豆類納豆6001パック(50g)
肉類鶏もも肉301枚(250g)
海藻類乾燥ワカメ660-

ビタミンDを豊富に含む食材

ビタミンDは消化管からのカルシウムの吸収を助けます。1日あたりの推奨摂取量は400~800IU(10~20μg)です。ビタミンDは脂溶性ビタミンであるため、過剰に摂取すると体内に蓄積します。過剰摂取は高カルシウム血症の原因になります。したがって、推奨摂取量を守ることが重要です。

食品群 食品名 ビタミンD含有量(µg / 100g) 単位当たりの重量
魚介類いわし(丸干し)501尾(35g)
秋刀魚151尾(100g)
カレイ131尾(100g)
321切れ(85g)
ブリ81切れ(100g)
シラス干し60大さじ1(5g)
きのこ類干しシイタケ131個(5g)
きくらげ851枚(0.5g)
ビタミンDを豊富に含む食材

運動指導

骨粗鬆症による骨折予防に運動療法は効果的です。運動を継続することで骨量の減少が抑制されます。例えば、大腿骨頸部の骨折は、座位主体の生活を改善し身体活動を上げることにより、30%程度低下します。運動の種類は骨の縦方向への刺激になるような運動が骨強度の維持には有益です。水泳のような重力に抗しない運動よりは、走ったり飛んだりという動作が関係する運動の方が骨強度を維持できます。しかし、どのような運動でも継続できなければ意味がありません。もし、最も継続できるのが水泳であればもちろん続けたほうがよく、筋力強化や体力維持により骨粗鬆症に対して良い影響があります。

  • ジョギング
  • ウォーキング・散歩
  • 球技全般
  • エアロビクス・体操

身体の活動性を上げることが重要ですので、どんな簡単な運動でも長く定期的に続けることが重要です。継続は力なりという言葉がよくフィットするのが、骨粗鬆症の運動療法です。無理せず楽しく長く続けられる運動を探しましょう。

運動指導

薬物療法

骨折リスクが高い症例に対して施行される治療は、薬物療法が中心になります。薬物療法は、ADLやQOLの著しい低下の原因となる大腿骨近位部骨折や椎体骨折を予防することが目的です。近年、ビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体、選択的エストロゲン受容体調整薬などの骨吸収抑制薬の進歩により、骨強度低下を抑制できるようになりました。これらの薬を使うことで、明らかに骨折リスクが高い症例に対しては、骨折を部分的に抑制することが可能となりました。しかし、骨強度とは無関係の骨折リスクファクター(転倒頻度、遺伝、喫煙等の生活習慣など)への効果は期待できず、骨折リスクの高い症例に限ったとしてもその骨折抑制効果は限定的です(せいぜい5割程度の抑制効果)。骨形成促進薬も骨折リスクを減らすことができます。しかし、使用期間に制限があるため、長期的な効果は期待できません。なお、骨強度を適切に維持するためには、骨吸収と骨形成の新陳代謝を保つことが重要です。骨吸収を抑えるだけでは、一見すると骨密度が維持されているように見えても骨強度を維持できていないことがあります。ちなみに、本邦における骨折リスクの高い症例への薬物療法の実施率は低く(20%以下)、薬物療法を適切に実施するという課題も指摘されています。

カルシトニン製剤

カルシトニンは破骨細胞に対して抑制的に働くポリペプチドホルモンで、骨吸収の抑制が期待できます。甲状腺傍濾胞C細胞から血中に分泌されます。カルシトニンは鎮痛効果も有するため、骨粗鬆症の痛みに対して使用されることもあります。鎮痛メカニズムは、下行性疼痛抑制系の機能改善です。エストロゲンが欠乏すると、セロトニン受容体の発現が抑制されます。カルシトニンは脊髄後角におけるセロトニン受容体の合成を促進します。このような鎮痛メカニズムから、様々な疼痛疾患に対して鎮痛効果が発揮することが考えられ、CRPSや癌性疼痛に投与されることもあります。また、カルシトニンの投与は、結果的にβ-エンドルフィンの血中濃度を増加させるという報告もあり、鎮痛効果はモルヒネに匹敵する可能性が指摘されています。

  • 骨吸収の抑制
  • 鎮痛効果(脊髄後角におけるセロトニン受容体の合成促進、β-エンドルフィンの血中濃度増加)
  • 骨密度の上昇効果
  • 椎体骨折の抑制効果

ビスホスホネート製剤

ビスホスホネートは破骨細胞に対して抑制的に働くため、骨吸収の抑制が期待できます。ビスホスホネートは、鎮痛効果も有します。鎮痛メカニズムは、後根神経節でのサブスタンスP、CGRP、TNF-αのような炎症関連因子の抑制と骨吸収の現場において酸性環境を改善しTRPV1やASICsへの刺激の抑制が考えられます。

  • 骨吸収の抑制
  • 鎮痛効果(炎症関連因子の抑制、骨局所の酸性環境の改善)
  • 骨密度の上昇効果
  • 椎体骨折の抑制効果
  • 非椎体骨折の抑制効果
  • 大腿骨近位部骨折の抑制効果

ホルモン補充療法

骨粗鬆症の病態の進行において主たる役割を担うのは、エストロゲンの欠乏です。したがって、欠乏したホルモンを補充するホルモン補充療法は合理的な選択肢の一つのように考えられます。しかしながら、エストロゲンを補充するホルモン補充療法では多数の副作用が報告されているため、長期的に採用できる現実な選択肢とはなり得ません。ちなみに副作用には、乳がん、冠動脈疾患、脳血管疾患や肺塞栓症など致命的なものが含まれます。

選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)

副作用の多いホルモン補充療法の代替治療として用いられます。骨のエストロゲン受容体に対して選択的に結合するためホルモン補充療法で見られるような副作用はほとんどないとされています。また、エストロゲンに準じる作用が、鎮痛効果を発揮します。鎮痛メカニズムは、サブスタンスPやCGRPの産生抑制、中枢におけるドパミン受容体の機能改善、β-エンドルフィンの血中濃度の増加が考えられています。なお、閉経後はエストロゲン受容体の絶対数が漸減していくため、SERMの効果も弱くなっていく可能性が考えられます。

  • 骨におけるエストロゲン類似作用
  • 鎮痛効果(サブスタンスPやCGRPの産生抑制、ドパミン受容体の機能改善、β-エンドルフィンの血中濃度増加)
  • 骨密度の上昇効果
  • 椎体骨折の抑制効果
  • 非椎体骨折の抑制効果

副甲状腺ホルモン(PTH)製剤

PTHは、骨芽細胞の機能を向上させることで骨形成を促進します。作用メカニズムは、骨芽細胞の分化促進とアポトーシスの抑制です。PTH製剤は、骨形成や骨の微細構造を改善し骨強度を増加させます。骨強度を保つためには、骨吸収と骨形成のバランスを保つことが必要であり、骨形成を促進することができるPTH製剤は骨強度の維持において重要な役割を担います。鎮痛効果としては、骨粗鬆症の腰痛を改善したという報告があります。

  • 骨形成の促進・骨微細構造の改善
  • 鎮痛効果
  • 骨密度の上昇効果
  • 椎体骨折の抑制効果
  • 非椎体骨折の抑制効果

抗RANKL抗体

RANKL(receptor activator of NFκB ligand)は、破骨細胞の前駆細胞に発現する RANK に結合し、破骨細胞の分化を誘導します。破骨細胞の分化過程においてRANKLは必須のサイトカインです。したがって、このRANKLの中和抗体は破骨細胞の抑制につながるため、骨吸収を抑制できます。

  • 骨吸収の抑制
  • 骨密度の上昇効果
  • 椎体骨折の抑制効果
  • 非椎体骨折の抑制効果
  • 大腿骨近位部骨折の抑制効果

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

骨粗鬆症の痛みに対して投与されることがあります。破骨細胞の活性化にはプロスタグランジンE2が関与するため、NSAIDsによりアラキドン酸カスケードを抑制することは意味があるように思えます。しかし、骨粗鬆症の痛みは、中枢と末梢を絡めた複雑な病態である可能性が高く、プロスタグランジンE2の抑制のみで片付けられるほど簡単ではありません。したがって、効果は限定的で無効症例も多くあります。

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