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胸郭出口症候群

本記事の内容は、信頼性が高いと考えられる各方面の情報を元に記載していますが、医師の診察に代替・優先されるものではありません。患者様の治療に関しては医療機関を受診の上、医師の診断を仰いでいただけますようよろしくお願いします。

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胸郭出口症候群とは

肩こりが併発する疾患の中で、胸郭出口症候群は特にその頻度が高いと考えられています。例えば、肩こりを主訴とする症例の原因疾患の50%以上が胸郭出口症候群であったという報告や、胸郭出口症候群の100%に肩こりが併発するという報告があります。好発年齢は20~60代(特に30~50代)で、女性に多いとされています(男性の2~4倍)。

胸郭出口症候群とは

胸郭出口症候群の原因

胸郭出口部において、腕神経叢(稀に鎖骨下動静脈)が圧迫や牽引などで障害されることにより、胸郭出口症候群を発症します。腕神経叢の障害が原因の症例がほとんど(95%)で、鎖骨下動静脈が原因の症例はほとんどありません。圧迫型は筋肉質の「怒り肩」がリスク因子のために男性に多く(女性の約2倍)、牽引型は「なで肩」がリスク因子のために女性に多く(男性の11倍)認められます。具体的な原因として、①斜角筋症候群、②肋鎖症候群、③小胸筋症候群(過外転症候群)が挙げられます。

胸郭出口とは

胸郭出口は、第1肋骨、鎖骨、前斜角筋および中斜角筋で形成される狭いスペースを指します。また、この胸郭出口の近傍に存在する鎖骨下筋、肩甲下筋、小胸筋も含め、胸郭出口周辺スペースの構造的な狭小化が、胸郭出口症候群の発症に寄与します。そもそも、胸郭出口周辺は狭いスペースに神経や血管が密集していることが特徴で、少しの構造的変化により多彩な影響が簡単に出現します。

斜角筋症候群

腕神経叢と鎖骨下動脈は、前斜角筋と中斜角筋の隙間を通ります。前斜角筋、中斜角筋および第一肋骨に囲まれる領域を斜角筋三角と言い、この部位の狭窄により発症する症状を斜角筋症候群と言います。骨格の歪み、前斜角筋や中斜角筋の肥厚により、斜角筋三角は狭くなり腕神経叢と鎖骨下動脈が容易に圧迫されます。例えば、斜角筋のトリガーポイントは、斜角筋症候群の典型的な原因になります。

斜角筋のトリガーポイントについて詳しく知りたい医療従事者の方は、「斜角筋とトリガーポイント」をご参照ください。

肋鎖症候群

腕神経叢と鎖骨下動脈は斜角筋三角を抜けると、鎖骨下静脈と一緒に、肋鎖間隙と呼ばれる領域に入ります。肋鎖間隙では、上方に鎖骨内側1/3と鎖骨下筋が、後方に第一肋骨の前1/3と前斜角筋・中斜角筋の付着部が、前方に肋鎖靭帯が位置します。この領域の狭窄により発症する症状を肋鎖症候群と言います。特に、鎖骨と第一肋骨により腕神経叢および鎖骨下動静脈が圧迫されます。斜角筋症候群と症状は類似するものの、斜角筋へのトリガーポイント注射では症状の改善が得られません。

小胸筋症候群

腕神経叢と鎖骨下動静脈は肋鎖間隙を抜けると、小胸筋下間隙と呼ばれる領域に入ります。小胸筋下間隙では、前方に小胸筋が、後上方に肩甲下筋が、後下に前胸壁が位置します。この領域の狭窄により発症する症状を小胸筋症候群と言います。例えば、小胸筋のトリガーポイントは、小胸筋症候群の典型的な原因になります。小胸筋症候群は上肢の過外転により症状が出やすいため、過外転症候群とも呼ばれます。

胸郭出口症候群の原因

小胸筋のトリガーポイントについて詳しく知りたい医療従事者の方は、「小胸筋とトリガーポイント」を参照してください。

胸郭出口症候群の症状

胸郭出口症候群の大部分では、胸郭出口部において腕神経叢が圧迫や牽引されることにより、頸部~肩部~上肢にかけて痛みやしびれ、動作不良を生じます。まず、頸部や肩部の痛みや不快感から始まり、上肢の内側や体側を下行して拡大していきます。自律神経症状などの全身の不定愁訴を生じる症例もあります。また、鎖骨下動静脈が圧迫されると血行不良を生じます。上肢の色は、鎖骨下動脈が圧迫されると血流が途絶えるために白くなり、鎖骨下静脈が圧迫されると血液が戻れずにうっ血するために青紫に変色します。

局所症状

  • 肩こり
  • 頭痛
  • 後頸部の痛み
  • 肩甲部の痛み
  • 胸部の痛み
  • 上肢の痛み
  • 上肢のしびれ
  • 上肢の挙上困難
  • 手指の冷え
  • 手指の発汗異常

など

全身症状

  • 倦怠感
  • 睡眠障害
  • 発熱
  • 嘔気
  • 眼精疲労
  • 耳鳴り
  • 動機
  • 胃腸障害

など

胸郭出口症候群の治療法

治療は、侵襲性の小さい保存療法から始まります。3~6ヶ月の保存療法では改善が認められない場合、圧迫型の症例には外科的治療が選択されることがあります。

生活習慣の改善

  • 不安の解消
  • 姿勢の改善(デスクや椅子の調節など)
  • 症状を悪化させる動作の回避(重量物の挙上・頭上の作業の回避、バックパックの回避など)

筋トレ(牽引型のみ)

  • 肩甲帯筋群の筋力強化・ストレッチ
  • 水泳のような全身運動

装具療法(牽引型のみ)

  • 肩甲骨バンドの装着

理学療法

  • 温熱療法
  • 電気刺激療法
  • 筋肉のストレッチ

薬物療法

  • NSAIDs
  • ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤
  • 抗不安薬
  • 抗うつ薬
  • 筋弛緩薬
  • ビタミン剤

など

神経ブロック・注射療法

  • トリガーポイント注射
  • 腕神経叢ブロック
  • 斜角筋ブロック
  • 星状神経節ブロック
  • 腰部交感神経節ブロック

外科的治療

  • 第一肋骨切除術
  • 斜角筋切離術
  • 小胸筋切離術

など

胸郭出口症候群の治療法

胸郭出口症候群の予防法

胸郭出口症候群は、保存療法とともに予防が重要な疾患です。予防のためには日常生活動作に気を配り、改善することが重要です。

  • 重量物を持ち上げない
  • 両手に重い荷物を持たない
  • 頭上で作業をしない
  • バックパックを担がない

など

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